ベートーヴェン
交響曲第9番ニ短調 作品125『合唱』

アンネ・シュヴァンネヴィルムス（ソプラノ）
バーバラ・ディヴァー（アルト）
ポール・グローヴズ（テノール）
フランツ・ハヴラダ（バス）
東京オペラ・シンガーズ
サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮：小澤征爾
録音：2002年9月　松本文化会館 第九

ドイツの文豪シラーの頌詩「歓喜に寄す」による独唱と合唱を終楽章に置いて、全人的な理念を音楽によって表現したベートーヴェン畢生の大作。小澤征爾がサイトウ・キネン・オーケストラを指揮した、彼にとっては再録音にあたる演奏で、誠実で劇的なアプローチによって作品の本質に鋭く肉薄し、緊迫感に溢れた鬼気迫る演奏を繰り広げています。演奏は大規模管弦楽団と合唱によるもので、最近流行りの小規模なものとは異なります。長所は音に厚みと重みが出ること、短所は録音の焦点がボヤけ気味になることと縦の線を合わせるのが難しくなり、小規模のようなザクザクした小気味よさが望めないこと。フルトヴェングラーからバーンスタイン辺りまでと似たような編成。ただしテンポはそれらほどゆったりしてはいない。かといってガーディナーほど速くはなくやはり重みがある。中庸をとったわけだ。録音は最上等で大規模なものとしては最高水準と思う。演奏も大規模なものとしては最上等。合唱のソリストは素晴らしい。文句なしの名盤です。

本演奏はけっして表面的な響きの美しさを追求するものではありません。アンサンブルの完璧さを求めるアプローチとも異なり、むしろ伸び伸びとした大らかさこそ身上かも知れません。全体の中で第３楽章が特に出色。この情感の豊かさには素直に心が動きます。地理的には日本の真ん中の地方都市で、日本人指揮者、多くが日本人の演奏家によるベートーヴェン。でもこの情感の豊かさと肌理こまやかさの魅力は世界にしかと届くだろうなと感じさせます。心で歌い全員が全員の音楽に耳を傾ける、その様子が手に取るようにわかる。終楽章も緊張感があり、格調の高さが秀逸です。

国内盤、帯無し、盤面傷無し

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